【開催報告】第5回協働環境調査報告会「協働力パワーアップセミナー」

 

 2014年10月27日(月)、第5回協働環境調査報告会「協働力パワーアップセミナー」を新潟ユニゾンプラザで開催した。

 

 本調査は、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]が全国の中間支援組織と協働で実施したもので、正式名称は「都道府県、主要市におけるNPOとの協働環境に関する調査」。2004年に第1回が行われ、今回が5回目。

 自治体とNPOとの協働を拡充しようという機運の高まりを受け、協働を産み育てる環境(基盤)の整備が

どの程度進められているのか、その実態を把握するものだ。

 新潟県では、新潟県・新潟市・長岡市・上越市・三条市・佐渡市の1県5市が対象となった。

 

協働の相乗効果は、市民にもたらされなければならない

冒頭、IIHOEの川北氏から、協働とは、『「共通の目標の実現」のために、「責任と役割を共有・分担」し、「ともに汗をかき、成果を共有する」こと。』で、協働した結果として、相乗効果が市民にもたらされることが必要だと説明。

 

だからこそ、「単年度」「思い付き」「行政依存」の形の協働事業は失敗の典型であるという。

 

その上で、協働環境とは、「協働を進めるための基盤、協働のしやすさ」であるという。

 

今回の調査では、協働環境が整備されている状態として、

・協働を推進する条例や指針・計画がある

・条例・指針の策定を公開・市民参加で進めている

・行政職員が協働を進める体制・研修がある

・NPOからの提案を受ける制度がある

・指定管理者制度の設計・評価に市民が参加している など

19項目に対して、7段階の評価指標を設定して、都道府県・政令指定都市・中核市・市町村のうち255自治体を対象に横断的に評価した。

 

今年からは新たに、どのように協働を定義しているか、またNPOに限らず多様な主体との連携や小規模多機能自治をどう推進しているかも項目として加わった。

 

多様な住民ニーズを把握するための市民参画が進んでいない

今回の調査結果の全国傾向から、川北氏は「前回と比べて、都道府県で点数が低下、政令市や中核市で上昇している。」「NPOと行政の接点の制度化の進み具合としくみの活用度が、相変わらず低いままだ。原因は、行政・NPO双方の継続的改善志向が弱いことにある。」と指摘があった。

 

設問ごとに見ていくと、指針や条例の制定は都道府県・政令市ではすべて、市町村等でも約7割が進んでいるが、策定過程の市民参画や情報公開が進んでいる自治体とそうでない自治体とで大きく二極化していることが判明。

また、市民参画という点では、協働事業の審査・監査のプロセスや指定管理事業の制度設計や審査についてもあまり進んでいない現状が明らかになった。

 

特に、指定管理制度については、多様化する住民ニーズを把握するためにも、市民の参画が求められているにかかわらず、進められていないということは、ただ単に経費の節減だけしか見ていないことにも等しい。

 

川北氏は、「みなさんの自治体の公民館はどこも同じ時間に閉まることはないですよね?」と会場に問いかけた。

 

新潟県が低下する一方、中都市が健闘

 新潟県の調査結果について、新潟NPO協会の石本から、「全国同様に新潟県の点数も減少、一方で、中都市は平均を上回っている。」「点数が上昇した要因として、各市で自治基本条例の策定や広域自治組織の整備など、様々な施策が実施されたことが考えられる。」と報告があった。

 

 新潟県は、これまでの調査でも都道府県平均を下回っている。停滞している要因として、全庁的な協働の推進体制が整っていないことがある。協働担当部署だけで受けずに全庁的協働担当者を置くことや、協働への理解を促進することが求められる。

 例えば、先進的な取り組みをしている佐賀県では、「協働化テスト」という形で、全発注事業を一覧化して、協働できるかどうかを県民に示している。これは、全部署で協働が可能であることを示していることに他ならない。

 

 一方、新潟県では、平成20年に作成した「NPOと行政の協働マニュアル」がある。このマニュアルには、協働のプロセスとして、共通の課題・目的をすり合わせることや、相互評価して次年度の制度設計に生かすことが示されている。また、Q&Aも用意されており、完成度も高いものだ。

 ただ、作成後6年経ったが、まだまだマニュアルが県内の自治体に浸透しきれていない現状が分かる調査結果となった。

 

参加、支援から、協働・総働へ。

 新潟県の報告も受けて、川北氏からは、よりよい協働を促すためにも「市民参画」「情報公開」の2点について、進めていくことをあげた。

 

 ただ声を聞くだけの「市民参加」ではなく、市民が提言し、実施にも関わる「市民参画」を進めていくことが協働には大切なことであり、さらに、政策立案だけでなく、業務執行の部分にまで広げることで、担い手としての市民を育成することになるという。

 

 このことは、協働による事業の持続性の向上にもつながり、小規模多機能自治を始めとした、行政だけに頼らない多様な主体による公共サービスの提供にもつながっていく。

川北氏は、協働とは、相乗効果が市民にもたらされること、つまり、「自治の回復」があり、「まち・むらの課題を、まち・むらの力で解決すること」だと話す。

 

 さらに、川北氏からは、協働が進まない5つの理由が示された。

1.目標と計画がない

2.流れもルールも決まっていない

3.推進するツールや体制がない

4.評価・監査されていない

5.NPOが協働していない

 

 これらは何年も前から指摘しているが、なかなか改善されないことだという。

 

 注目すべきは、5つ目の「NPOが協働していない」という点。

共通する社会課題を解決するのであれば、手を取り合って、NPO同士が連携することも必要だ。

そうすることで、行政とも協働しやすくなっていく。必ずしも行政のしくみに委ねるのではなく、NPO側が努力すべきこともあるだろう。

 

 最後に、川北氏からは、これまでは行政とNPOの協働が語られることが多かったが、これからは「多様な主体による協働」へ、そして「団体の支援」から「(小規模多機能)自治の確立・維持」に向けて、すべての部署・業務が、調達も含め、よりよい成果に向けて行動しなければならないと説く。

そして、定義・ねらいも、進め方も抜本的に見直す「協働2.0」=「総働」に持っていくことが重要だと話し、セミナーを終えた。

 

 

 セミナーを受けて、参加者からは、「行政との協働を推進するにあたって体系的な考え方、視点を学ぶことができた。」「(調査対象となっていない)自市の評価をしてみたい」「行政との関係性について、自分達だけが苦しんでいるかと思ったが、みんな同じ課題を抱えていることがわかった。今後の行政との向き合い方を学べた。」などの反響があった。

 

●協働のしくみを可視化した世界初の調査 第5弾!●

「第4回協働環境調査」(09年)から5年。

指定管理者制度施行から11年。

 

◆各自治体の協働を推進するしくみは、どれだけ進化したか?

◆協働を推進する制度は、本当に活用されているのか?

◆しくみづくりが進んでいる自治体は、どこが違うのか?

◆多様なステークホルダーとの「総働」をどう進めるか?

 

調査対象は、都道府県・県庁所在地市・政令市+中核市・小都市 255自治体分!

 

《概要》

●全国255の自治体の「協働を推進するしくみ」

   「協働しやすさ」 と「制度づくりへの市民参画」を

 8つのテーマと21の設問で調査。

●回答率は93.9%!

●全国の傾向と課題を分析。わかったのは・・・

  ☆ 都道府県は制度の多くが後退。市民からの提案

          の機会が大幅に減少。 

  ☆政令市・人口規模の大きな市では協働の提案を受

         け止める制度が拡充。都道府県との差が明らかに。

  ☆約7割の市区町村で総働のための「小規模多機能

         自治」の検討・実践が進む。

●しくみづくりが進む自治体の豊富な事例を紹介!

  ☆高得点自治体は取組みをどう進めてきたのか?

  ☆これからの協働推進のためにすべきことは何か。

[調査時期] 2014年6月~8月

発行] 2014年10月

A4判57ページ冊子+CD-ROM 

価格:2,000円(税、送料別)  

 

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●「協働=住民自治」を進化させるための必読テキスト!●

ソシオ・マネジメント第3号 小規模多機能自治-総働で、「人」密度を高める

 

島根県雲南市を中心とした全国の「地域自主組織」の取り組みを紹介しながら、読者の地域で小規模多機能自治を進める手法について紹介している一冊です。 

 

 

自治体とNPO等との協働に取り組む自治体関係者、およびNPO関係者はもちろん、地域ぐるみの「総働」「小規模多機能自治」に関心のある方、地域のステークホルダーの一員として自治体との協働・総働に取り組む全ての方にお読みいただきたい1冊です! 

 

【内容】(目次より一部抜粋)

島根県雲南市の「地域自主組織」取り組みハイライト

1. 雲南市の地域自主組織は どのように生まれたか

 ・人口減少と高齢化の先進地が、小規模多機能自治の先進地に

 ・公民館を、住民主体の地域づくりの拠点に

 ・多様な工夫を学び合い、磨き合う「自慢大会」と「円卓会議」

 ・自主組織が担っている主な事業の例

 ・地域の組織の意見と状況から、行政の制度も進化する

 ・地域の声は「やってくれない」から「やらせてくれない」へ

 

2. 小規模多機能自治は、なぜ必要か

 ・延長線上で考えるな! これまで20 年とこれから20 年は、決定的に違う

 

3. あなたのまち・むらで、小規模多機能自治を進めるために

 ・雲南市の小規模多機能自治の進化を促した7 つの特徴と要因

 ・行事から事業へ、イベントからサービスへ

 ・人口減・85 歳以上増に備えるには、時間の使い方を変えるしかない

 ・まず行政は、必要性を徹底的に理解し、促す施策をつくり、共有を働きかける

 ・協働から総働へ

 ・小規模多機能自治の必要性を住民に伝え、取り組みを促す

 ・「自慢大会」や「円卓会議」で状況や知恵の共有を促す

 ・次世代育成を促すために、雇用者に働きかける

 ・地域の変化に備えて、取り組みも組織も進化する

 ・5 年先・10 年先の役員のために、進化のきっかけをつくる

 ・地域を住民自らで「アセスメント」する

 ・活動予定から、事業計画へ

 

[発行] 2016年4月

A4判55ページ冊子 

価格:600円(税、送料別)  

 

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